連載コラム「税の交差点」第44回:2つの従属―財務省と日銀

森信茂樹
東京財団政策研究所研究主幹

今回公表された「骨太方針2018」をじっくり読むと、さまざまな視点が見えてくるが、「従属」というキーワードを使って分析してみたい。

第1に、財務省を従属させたことである。2019年10月から法律通り消費税率10%への引上げを行うことを決定する一方で、税制・財政措置を総動員し、来年度当初予算から必要な手当やあらゆる施策を講じることを約束した(させた)。

たとえば食料品などに適用される軽減税率制度の導入である。これには1兆円の財源が必要となり、平成30年度税制改正で所得税増税、たばこ増税などが決定されたが、いまだ3000億円程度不足する。十分な財源確保なしの軽減税率の導入となる可能性もある。

また、消費税率引上げ分の使い道について見直すこととされた。消費増税により得られる5兆円強の税収は、これまでは5分の4が財政再建に充てられる予定であったが、今回半分は、教育負担の軽減・子育て層支援・介護人材の確保等にあてられることとなった。さらに幼児教育の無償化も行われるので、財政健全化に回る税収は予定より大幅に減少する。

最後に、駆け込み需要と反動減の主因となる、自動車や住宅などへの購入支援である。「需要変動を平準化するため税制・予算による対策を講じて耐久消費財への悪影響を緩和する」と書かれている。さらには小売り事業者の価格設定の自由度を広げることも書かれている。

ここまで大盤振る舞いして消費増税を実施する。財務省としては、恒久財源が入ってくるのであれば、エコポイントのような単年度での支出はやむを得ない、ということで、屈服したのであろう。前次官のセクハラ問題などもボディーブローのように効いている。

次に、日銀の従属である。内閣府が本年1月に公表した「中長期の経済財政に関する試算」によれば、アベノミクスが奏功する経済実現ケース(実質2%、名目3%以上)で、長期金利と名目経済成長率の関係を見ると、2025年まで経済成長率が長期金利を上回る姿が描かれている。

これは日銀が現在の低金利政策を2025年まで続けるということを意味しているとも読み取れ、金融政策に大きなプレシャーを与えることになる。問題はその先で、このような「試算」に対して、世界の投資家が、日銀の金融政策は財政赤字をファイナンスするためで、金融政策が財政に従属する「財政従属」(fiscal dominance)ではないか、という懸念を持つことである。そうなれば、将来の国債暴落のきっかけになりかねない。

本来このような政策を正面から議論することが役目のはずの経済財政諮問会議も沈黙しており、安倍政権に従属している。

安倍政権は、日銀や財務省を従属させて、はたしてどこに向かうのだろうか。

 

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