連載コラム「税の交差点」第19回:マイナンバーと納税者利便 (第1回)

森信茂樹
東京財団上席研究員/税・社会保障調査会座長

もうすぐマイナンバー制度による情報連携が始まる。内閣府のホームページによると、平成29年7月中旬から試行運用を開始し、秋頃からは本格運用の開始という予定のようだ。

あまり知られてないが、マイナンバー制度の導入により次の3つの社会インフラが整備されることになる。

番号と呼ばれる「マイナンバー・法人番号」、実社会やオンラインの本人確認手段である「マイナンバーカード」、行政機関が保有する特定個人情報の確認等が可能なポータルサイトである「マイナポータル」の3つである。

とりわけ使い勝手の良いのは、国民全員に用意される「マイナポータル」である。

これは、個人ごとに開設されるポータルで、情報提供等記録表示、自己情報表示、お知らせ表示等の機能がある。税理士や親族等を代理人に設定して、アクセス権を付与することも可能である。

この利用には、マイナンバーカードとPC、カードリーダーが必要であるが、将来的には、スマートフォンでの活用が検討されている。

図 マイナポータルのイメージ

マイナポータルの「お知らせ表示」に届く行政からの通知を、児童手当の申請、予防接種の申し込み、保育等の手続きの簡素化につなげることが可能になる。

たとえば児童手当の更新手続きについて、電子的に送付される現況届の案内からオンラインで届出を行い、所得証明書等の添付書類を省略することで、申請者の利便性が向上する。

1000万枚強で頭打ちになっているマイナンバーカードの利用促進を図るという効果が期待されている。

筆者が注目するのは、マイナポータルを納税者のためにいかに活用するのか、ということである。

この点について、6月19日に開催された政府税制調査会で、米国や欧州諸国、さらには韓国などの「税務手続の電子化など、納税者の利便性向上に係る諸制度とその運用状況・情報収集のあり方」が報告、議論されている。

「経済活動のICT化を踏まえ、税務手続の利便性向上及び適正公平な課税の実現に向けた検討のため、諸外国における取組みを参考とする」ということで、政府税調委員を海外に派遣して調査した結果の報告である。

資料は以下のサイトで入手可能だ。
http://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/zeicho/2017/29zen10kai.html

筆者はマイナンバー、マイナポータルの活用について、数年来いろいろ検討を続けている。例えば『未来を拓くマイナンバー』(森信編著、中央経済社、2015年)では、税・社会保障だけでなく、奨学金制度、証券・金融、医療・健康、地方公共団体での活用、マイナポータルの民間活用についても詳細に述べている。次回以降、その活用法について逐次説明していきたいが、基本的な考え方は以下のとおりである。

膨大な国費を使い国民全員に付番する制度を創設し、国民の税や社会保障の情報を得ているので、その情報は、国民が自らの利便のためにいつでも利用できるようにする、ということである。

そのためのツールがマイナポータルで、すでにさまざまな活用が行われている欧米諸国を参考にしつつ、国民的に議論すべきということである。

最も進んでいる北欧諸国では、課税当局が納税者の申告の利便性を高めるため、あらかじめ当局の入手している情報を納税者に返し、それに基づき申告する「記入済み申告制度」が導入されている。

わが国でも、そこを最終目標としつつ、当面は、わが国の納税の事情も踏まえて、「年末調整での活用」など、可能なところから始める必要がある。
(以下、続く)

 

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