連載コラム「税の交差点」第9回:「こども保険」の問題提起するもの

森信茂樹
東京財団上席研究員/税・社会保障調査会座長

小泉進次郎氏ら自民党若手議員が作る自民党の「2020年以降の経済財政構想小委員会」から、「『こども保険』の導入~世代間公平のための新たなフレームワーク構築~」と題する提言(以下「提言」)が公表された。子どもが必要な保育・教育等を受けられないリスクに対して、「子ども保険」の創設を提言したものである。

具体的には、保険料率0.2%(事業主0.1%、勤労者0.1%)の保険料を、事業者と勤労者から、厚生年金保険料に付加して徴収する。自営業者等の国民年金加入者には月160円の負担を求める。財源規模は約3400億円となり、小学校就学前の児童全員(約600万人)に、現行の児童手当に加え、こども保険給付金として、月5千円(年間で6万円)を上乗せ支給する」というものである。

背景には、社会保障の崩壊を招きかねない少子化の流れを食い止めるとともに、教育の機会均等が崩れることによる格差の連鎖を断ち切っていこうという思想がある。

筆者もその考え方には全く異論はない。議論となるのは、その財源として、新たな公的保険を作ることをどう考えるかという、負担論である。

これについて、当調査会では、明治大学田中秀明教授の論考を掲載した(こども保険の怪~教育・保育の充実に名を借りた格差拡大策だ)。また、当調査会メンバーである法政大学小黒一正教授が「『こども保険』の理論的な整理」で、慶應義塾大学の土居丈朗教授が「「こども保険」と「教育国債」は、何が違うのか」で評論をされているので参照されたい。

提言を読んでの筆者の感想は、以下のとおりである。

まず、工夫がなされていると思う点は、

・保険は、負担額と給付額が一致しており、給付と負担の関係が明確で、税よりは受け入れやすいこと

・事業主からも負担を求めることで財源調達の幅が広がること、消費税・教育国債と比較して、負担の逆進的が少ないこと(ただし後述するように反論あり)

・保険料率が低い限り経済への影響が少ないこと

などがあげられよう。

一方、検討課題としては、

・少子化対策や幼児教育は最重要課題だけに、勤労者だけに負担を求める社会保険ではなく、高齢世代を含めた全世代で負担を分かち合うことが本筋ではないか、

・高齢者からも負担を求める消費増税を避けるのは、シルバー民主主義に屈したのではないか、

・子どもがいない世帯にも保険料の負担を負わせることが、公的保険として妥当か、

・保険料の負担の実態を見ると、自営業者(非正規雇用者も含む)は定額で、これは、消費税より逆進性が高い。また未納の問題をどう扱うのか。

という問題が考えられる。

総じて言えば、自民党内ではこれまで、教育無償化、それを「教育国債」(実態は後世代が負担する赤字国債)でまかなう、という極めて安直な議論がなされてきたが、それに比べれば、極めてまともな提言だ、と考える。

これを議論の起爆剤として、消費増税を含めたあるべき税制議論・どの世代でどう負担していくかという国民的な議論に、建設的につなげていくことが必要であろう。単発に終わる提言にしてはならない。

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